絵を描く上で知っておくべき10の視覚特性

私たちが世界を見るときには、とても複雑で特別なことを頭の中で行っています。 その過程で生じている視覚特性を知ることは、描く上でも、絵を見る人の立場に立つ上でも役立つと思います。
ということで、その中で特に絵を描く上で関係しそうな視覚特性をピックアップしました。

1.側抑制

下図(左)のエッジ部分を見てください。黒に接する灰色の部分は明るく、白に接する部分が暗く見えると思います。 色や明るさが変化した境界がより強調される色に知覚される現象で、黒に接すれば明るく、白に接すれば暗くなります (灰に接する黒や白も変化して見える)。明るさだけではなく、色相や彩度でも同様の現象が起きます。
  
シュブルール錯視

カドの部分はエッジよりも効果が大きいです。下図は単色の四角を重ねただけの画像ですが、四角の左上が明るく見えます。

2.色の恒常性

白い紙を太陽光と蛍光灯で照らすときでは反射してくる波長はかなり異なる。しかし、それにもかかわらず白い紙は白色と知覚できる。 これは、見ているモノの周辺映像や文脈・記憶を考慮することで正しい色を知覚しているからと言われています。

中央の四角形の色は同じにも関わらず、違う色に見えます。下図(左)では左の四角形の方が鮮やかに、下図(右)では左がやや青みがかり、右は黄色がかかって見えるはずです。 これは、囲んだ色と反対側の色知覚を促進する効果になります(黒で囲めば明るく見える)。 側抑制同様に明るさ・色相・彩度で生じる現象になります。
  
色の対比

3.色の同化

四角形の上に線を何本も並べることで、背景の色が並べた線の色に引っ張られる現象です。下図(左)を見ると左の背景はより青っぽく見えると思います。 これは彩度の高い線に影響を受けたために背景も彩度が高く見えています。色の対比は反対側の色に見えるのに対して、色の同化は同じ色の方向に促進する現象です。
  

4.面積効果

面積が大きくなるほど色がより強く知覚される現象です。面積を大きくするにつれて、より鮮やかに明るく、または、暗い色はより暗く見えるようになります。 カラーパレットで理想の色を選んだつもりでも画面全体に塗った色でイメージが違う! といった体験はないでしょうか?その原因の要因の1つがこれです。

5.色の充填

白色にも関わらず、別の色に感じてしまう現象です。下図(左)見てください。領域内がうっすらと赤みがかっているように見えないでしょうか? 見えにくい場合は少し遠ざかって見るといいかもしれません。面を構成するエッジの情報が面の色知覚に影響を及ぼしています。(※内側エッジが赤色だからといって赤みがかかるとは限らない)
充填とは少し違いますが、エッジ情報が面の知覚に影響を及ぼすという意味で、クレイク・オブライエン・コーンスィート錯視も書いておきます。 これは中央にちょっとしたグラデーションのエッジが入ることで、暗いグラデーション側は暗い面に見え、明るいグラデーション側は明るい面に見える現象です。 しかし、中央のグラデーション以外は同じ色をしています。

  
水彩効果  クレイク・オブライエン・コーンスィート錯視

6.主観的輪郭

見たことある人が多いと思いますが、これはカニッツァトライアングルという錯視になります。実際に三角形が無いにもかかわらず、あるように見えてしまう現象です。 ただ三角形が見えるだけではなく、その領域は他の白と比べてより白く感じられます。線と線が繋がるような部分があると頭の中でその間も線があるように認識しています。 下図(右)では長方形に見える部分が白く浮き上がって見える。

  

7.形の恒常性

遠くにあるものほど小さく見えますが、なぜ小さい物(小人とか)と認識せずに同じ大きさの物に見えるのでしょうか。 色の恒常性と同じく、見ているモノの周辺映像(いわゆるパースペクティブ)や文脈・記憶を考慮することで正しい大きさを認識しているからと言われています。

右奥の人物が大きく見えます。これは周辺のパース情報から奥行きを知覚し、奥に立っているにもかかわらず大きさが変化していないため、大きい人物に見えています。 実際に、左奥の人物は小人ではなく、手前にいる人物と同じ大きさに見えます。

8.幾何学的錯視

周辺の比較対象の図形によって形の見えが変わってくる現象です。下図(左)では中央の円の大きさは一緒ですが、左側が大きく、右側が小さく見えます。 下図(右)は下の扇形の方が大きく見える現象です。並べ方によって線同士が影響して大きく見えます。


デルブーフ錯視  ジャストロー錯視

9.影

影は物体の位置情報に大きく影響を及ぼします。画像を見ると、右側のボールの方が手前に高くあるように見えます。 しかし、どちらも同じ位置で、影の位置だけが異なっています。私たちは物だけではなくて、その影が投影された位置や形からもたくさんの情報を受け取っています。


10.陰

こちらは陰影の方の陰になります(影:Shadow、陰:Shade)。陰影情報は物体の形状知覚を助けます(凹凸によって陰影が生じるため)。 トレスをしても異次元に見える要因の1つは、陰が正しく描けておらず形状が正しく知覚されないことです。

左画像を見るといくつか凸があるのが分かります、これを上下に反転させたものが右画像で、凸であった部分が凹んでいるように見えます。
人間は無意識に上から光が当たっているものと想定して知覚をするためにこのような現象が生じています。


ホロウマスク錯視→ http://www.brl.ntt.co.jp/IllusionForum/v/hollowMask/ja/index.html



ここで紹介したものは本当にごくごく一部です。私たちは何気なくモノを見ていますが、人間の眼と脳というのはあまりに複雑すぎて分からないことばかり なのが現状です。お絵描きに直接影響するというわけではないですが、デッサンで物を見るときや色を塗る時に意識するのとしないとでは大きく違うと思います。

もし興味がわいたら上記のキーワードやwikipediaなどで調べてみてください。ただ眺めるだけでも十分楽しいです。


  
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